乳がん治療の新時代-がん遺伝子パネル検査と最新の薬物療法
現在,日本人女性の9人に1人が乳がんと診断される時代となり,乳がんは日本人女性で最も罹患率の高い疾患です。
乳がんの薬物療法は近年,目覚ましい進歩を遂げています。特に転移・再発乳がんの治療では,がん遺伝子パネル検査(がん組織や血液を用いて,複数のがん関連遺伝子を一度に調べる検査)によって検出された遺伝子変異を標的とした治療薬が次々と開発されています。 日本では2024年3月より,PIK3CA,AKT1,PTEN遺伝子変異を有するホルモン受容体陽性かつHER2陰性の手術不能または転移再発乳がんに対し,AKT阻害剤であるカピバセルチブがフルベストラントとの併用療法として保険診療で使用できるようになりました。 カピバセルチブのほかにも,PIK3CAやESR1変異を標的とした薬剤が米国ではすでに承認されており,日本国内における今後の動向が注目されています。対象となる方は,がん遺伝子パネル検査を実施する適切なタイミングについて,外来の主治医とよく相談してください。